植物性たん白加水分解物ってなに?

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自分が知りたくて調べているうちに、わかったことを書き留めたくなり、結果的にこんなに長い記事になってしまいました。
しかも調べるうちに、これはネット多数散見される引用文だけでなく、本物をいちから読まなきゃダメだと思い、「食品の裏側―みんな大好きな食品添加物 Kindle版」まで買ってしまいました^^
自分のための内容なので、ほとんどメモを連ねただけでまとまっていませんが、誰かの参考になれば幸いです。

植物系のたん白質を酸や酵素で加水分解して取り出した調味料

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塩酸で分解するのが一般的

植物性たん白加水分解物というのは、大豆・とうもろこし・小麦等のたん白質を酸や酵素で加水分解して取り出した調味料です。たん白質は分解してペプチドやアミノ酸にすると色々な味がつくれるようになり、主にうまみ成分を付加する素材になるそうです。

※植物性に限定した情報が乏しいので、以下は動物性と植物性を合わせた「たん白加水分解物」全体について書きます。
ちなみにこのブログで紹介した商品にも↓こんなにたくさん使われています。

👉 このブログで”たん白加水分解物” を商品検索してみると・・・

「酸素分解」と「酵素分解」の2種類の方法があるたん白加水分解物ですが、酵素よりも酸のほうが分解スピードが速く、味も酸のほうが「味の伸びやパンチ」があるため、酸分解法のほうが一般的でそのときには塩酸が使われるそうです。ただし塩酸は胃酸と同じ成分なので、人間の「消化」に近いことを化学的に行っていると思えばいいのかもしれません。

私が見た感じでは一番わかりやすかった、生協のサイトには以下のように書いてありました。

「塩酸」と聞くと心配になるかも知れませんが、胃液に含まれる塩酸で私たちが食べたたんぱく質が消化されるのと似た理屈です。分解が終わった後の塩酸はアルカリで中和し、食塩のかたちで除去します。

(出典:原料のたんぱく質をアミノ酸に分解する製法の一つです。(日本生活協同組合連合会)

もう少し詳しく確認したい方は以下をご覧ください。
🌐「たんぱく加水分解物」って何?(日本生活協同組合連合会)
🌐 たん白加水分解物とは(日本アミノ酸液工業会)

塩酸分解では多く摂取すると体に悪いクロロプロパノール類 (MCP)が微量に発生します

アミノ酸液もたん白加水分解物です

たん白加水分解物はアミノ酸液という名前で表記されていることもあります。「アミノ酸液」で検索すると、このブログの掲載食品の中では以下の商品に入っています。アミノ酸液という表示は主に価格の安い醤油に使われていたりするそうです。

👉 このブログで”アミノ酸液” を商品検索したら…

塩酸による加水分解で作られるたん白加水分解物やアミノ酸液は製造過程でクロロプロパノール類 (MCP)という物質が微量に発生します。
この物質を多量に摂取すると肝臓、腎臓等に明確な発がん性を示す証拠が得られています。またラットを使った実験では雄の生殖障害が確認されていたり、神経病変が脳幹で観察されています。

(出典:食品中のクロロプロパノール類の概要(内閣府食品安全委員会)※PDF

動物性に関してはよくわかりません

Alpha-chlorohydrin-3D-balls

ここでまた話が「植物性たん白加水分解物」に戻るのですが、植物性たん白には微妙に脂質が含まれておりそれが塩酸の「塩素」と化学反応して「3-MCPDや1,3-DCP」と呼ばれる物質(アルコールの一種)が生成されます。現在ではそれ以外の食品加工(油脂の精製等)でも同一または類似の物質が複数生成されることがわかっているので「クロロプロパノール類 (MCP)」と総称されることが多いようです。

たん白加水分解物のクロロプロパノール類については「植物性たん白」と明言してある解説サイトが多いので、たぶんこれは植物性たん白に限定される話なのだと思いますが(未確認)が、既出の検索結果を見てもわかる通り、通常は動物性/植物性を区別せず単に「たん白加水分解物」と表記されるので、よくわかりません。混合して使われる場合も多いかもしれませんしね。

発端はアジア製の調味料や醤油のアミノ酸液

Soy Sauce and 3-MCPD (3-Monochloropropane-1,2-diol)_file

この問題のそもそもの発端はヨーロッパで流通していたアジア製のオイスターソースや醤油にこの物質が含まれているのがわかったことでした。そして影響のある商品を販売しないように推奨したのです。

📝 (出典:3-MCPD(Wikipedia 英語版の自動翻訳)

そのことから日本でも醤油に使われるアミノ酸液が問題になり、低減対策として醤油業界に「アルカリ処理したアミノ酸液を使うように」通知を出しています。そうすることで低減できるそうですが、これが前述の生協サイトにあった「分解が終わった後の塩酸はアルカリで中和し、食塩のかたちで除去します。」と同じ意味かどうかは不明です。↓

📝 【農水省通知】食品中(アミノ酸液及びアミノ酸液を含むしょうゆ)のクロロプロパノール類の低減対策の徹底について

しかしそれでもいうことを聞かない業者がいたのか、依然として高濃度の3-MCPDが含まれる醤油が存在したため、農林水産省は4年後の平成24年に再度通知を出しています。↓

📝 【農水省通知H24】アミノ酸液(酸加水分解植物性たん白)及びアミノ酸液を含むしょうゆ中のクロロプロパノール類の低減対策の徹底について

低減のための国際的な動向

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クロロプロパノール類 (MCP)は多量に摂取すると健康に悪い影響を及ぼすことが高いことがわかっているため、国際機関では低減すべき物質として基準値(最大基準値:0.4 mg/kg)を定めています。また、また日本では特に基準は設けられていませんが、独自に基準を設けて使用を制限している国もあります。(↓国際基準値に比較すると厳しい国もあるけどゆるい国もありますね^^)

📝 各国の食品中の基準値(農林水産省)

農水省のサイトが超おススメです

これらについては農林水産省の以下のページに非常に詳しく書いてあります。私はこれらの一連のページを読んで、とてもよく整理されているし、見やすいし、わかりやすい言葉が随所に使われているので思わず感動してしまいました。更新もされているようですし、個人的にはクロロプロパノール類 (MCP)のバイブルにしてもいいぐらいです(笑)。そのぐらい農林水産省を見直してしまいました😊きっとこの部門に優秀な方がいらっしゃるんでしょうね。情報量が多いので読み込みに時間がかかりますが、クロロプロパノール類 (MCP)について知りたい方はぜひご一読を強くお勧めします!

📝 食品中のクロロプロパノール類及びその関連物質に関する情報(農林水産省)

植物性たん白加水分解物は食品に対してどんな効果があるの?

…と、ここまで書いてしまうと、空恐ろしい気持ちになる方もいらっしゃると思いますが、現在では製造方法の見直し等により健康リスクは無視できるほど小さくなっているそうです。ですが、単品ではなく、毎回三食で複数摂取した場合などのデータはないそうなので、気になると言えばもちろん気になります。
ですが、普通の食生活で「たん白加水分解物」を全く摂らずに暮らすことは不可能に近く、それを一切摂らないで生きていくなら、私の実情にはまったく合わない時間とお金とエネルギーが必要になるでしょう。(弁護して言うなら食品業界も事情は同じなのかもしれません。)

だからなるべく添加物のことは知りたいし、原材料表示を見て選択できる人になりたいな、というのがこのブログの主旨でもあります。

植物性たん白加水分解物は濃いうまみを作り出す

さてここで気分を切り替えて、植物性たん白加水分解物の効果について考えてみます。
植物性たん白加水分解物は食品に「うまみ」を付加してくれる調味料ですが、こちらで書いた「味の伸びやパンチ」ってなんでしょうね(笑)?「シャープなうまみ」「(後味ではなく)先味が強くなる」と表現しているサイトもあります。

でも私、なんとなくわかります。というのも、鰹節や昆布を使ってそばつゆやうどんのかけ汁を手作りすると、「天然のダシなのに薄いなぁ、煮出し方が足りないのかな?」と思うことがよくあるからです。だからきっと植物性であっても動物性であっても、天然のものより濃い「うまみ」を演出してくれるんでしょうね。
悪く言えば「うまみ」の刺激が強いということだと思います。
この味に慣れてしまうと、天然素材だけを使った純粋な食品に対して物足りなさを感じたり、素材にこだわっている飲食店の味を不味いと感じたりするそうです。

植物性たん白加水分解物はトマトと相性がいいらしい

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気が付けばこんなに長くなってしまいましたが、そもそも植物性たん白加水分解物について調べてみたいと思ったのは、「ミートソース フォン・ド・ヴォー仕立て/キューピー」の原材料にそれがあったからです。
今まで紹介して来た食品はすべて「たん白加水分解物」という書き方でした。なので”植物性”と書いてるところに興味を持ったんですよね。だって一般的には動物性か植物性か?なんて書いていないんだもん。
それはよく受け取れば、動物性は使っていないので、より正確な情報(リスクも含めて)を消費者に伝えたい目的かもしれませんが、悪く受け取れば”植物性”のほうがイメージが良いので敢えて表記したのかもしれません(私にはわかりません)。

ですが私の好奇心に急に火がついて、具体的にどんな素材メーカーがどんな植物性たん白加水分解物を作っているのか知りたくなり早速調べてみると、福神漬けで有名なしんしん(株式会社新進)が、アミシンという商品を製造していることがわかりました。こちらがアミシンのパンフレットです。こういうのを見ていると本当に興味深いですよね。加工食品メーカーがなぜそれを使っているのかがよくわかります。

それによるとアミシンは「・豊富なうま味成分・高い浸透性・少ない色調変化・素材の風味を生かす・マスキング効果(素材の臭み消し)」が特長で、特にトマトとの相性が抜群とのこと!なるほど~!だからミートソースに使われていたんですね💡

ちなみに動物性のアミノ酸系調味料の場合は(たん白加水分解物以外も含む)、昨年から日本たばこ産業株式会社の完全子会社となった富士食品からこんなラインアップが出ていますよ~。読むだけですごく参考になります。オープンにしてくださってありがたいです。

🌐 アミノ酸系調味料(富士食品工業株式会社)

たん白加水分解物は添加物ではなく「食品」の扱い

昔は熱や酵素で時間かけて分解していたのでしょう。

ものすごーく添加物っぽいたん白加水分解物ですが、JASで表示の義務はあるものの、食品衛生法では添加物ではありません。
面白いほどよくわかる「食品表示」(垣田 達哉:著)」によると添加物にならない理由は「従来から「抽出、分解でつくられたものは食品」という漠然としたルールがあるからです。」だそうです。

考えてみれば確かに「うまみ成分」の代表格でもあるだし汁は、植物性なら昆布や干しシイタケ、動物性なら鰹節や煮干をお湯で時間をかけて煮出しています。家庭の手作りなら今もそうですよね。それによってたん白質が分解されてうまみが抽出するということですよね。

たん白質がアミノ酸まで分解されると「うまみ」が抽出されるは昔から知られており、味の強い熟成チーズの伝統的製法では実際の動物の胃液を使ってたん白質を分解するプロセスがあったそうです。

この「胃液」の部分を塩酸に置き換えて速度を劇的に早くしたのがたん白加水分解物ですが、伝統的な製法の延長と考えると、いまだに「食品」として扱われる背景は、わからなくもありません。

(参考:味を決めるアミノ酸(バイオよもやま話)河合美佐子

たん白加水分解物は誤解を招く

たん白加水分解物が食品添加物に指定されないことに関しては、ネット上では「政府も学者もメーカー寄りで及び腰」という意見もありますが、これを添加物とすべきだという公的な議論は探しても見当たらないので(探し方が悪い?)、そこは不動なんだな、という感じがします。

むしろ今テーとして取り上げられているのは、「化学調味料不使用」「化学調味料無添加」と表示されている商品でも、多くにたん白加水分解物が入っており、成分的には変わりがないのに”すべてナチュラルな天然素材”のような誤解を消費者に与えていることです。
ほかにも、たん白加水分解物の別称「アミノ酸液」や酵母エキス(酵母を加水分解)など、化学処理されたうまみ調味料は、無添加をうたっている食品の多くに使用されています。
そもそも今、化学調味料という呼び名がうまみ調味料に変わっているため、世の中に”化学調味料”という製品は存在しないのですが、たん白加水分解物の正体はアミノ酸なのですから、添加物の欄に「調味料(アミノ酸等)」と書かれたもの(いわゆる化学調味料)と実体は同じものなんですよね。

対立する二つの意見

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昨年の4月から今年の2月まで、消費者庁で9回にわたって「食品添加物表示制度に関する検討会」が開催されました。

📝 食品添加物表示制度に関する検討会(消費者庁)

その中で「無添加・不使用」の件も議題に上がったようですが、呼ばれて意見を述べた団体の立場がの違いからか、見解が真っ二つに分かれてその相違がなかなか面白いです。

すべてではありませんが、目についたものだけ拾ってみると・・・

・「化学調味料」無添加表示・不使用表示は禁止はしていただきたい。(日本うまみ調味料協会)PDF
認めるべきではない(食品表示を考える市民ネットワーク)PDF
・無添加・不使用表示を不当に制限しないでください。大部分は事業者の努力で食品添加物の使用を減らしたことの正当な表示です。(日本消費者連盟)WEB
・無添加・不使用表示を不当に制限しないでください。使用しないで製造できればそれに越したことのないものであると考えます。(生活協同組合パルシステム東京)PDF

委員の皆さんの意見も分かれています

 

 

・現行の表示規則を見直すべきである。(森田満樹委員/消費生活コンサルタント)PDF
・誤認に繋がる無添加・不使用表示の禁止に向け、食品表示基準の改正が必要と考えます。 (上田要一委員/一般社団法人 日本食品添加物協会)PDF
・食品表示基準の Q&A等について一定の整理が必要だと考えます。会員企業の、無添加、不使用表示についての意見は様々 であり、何らかの形で規制あるいは Q&A により整理すべきとの意見が多い 一方で、現状維持あるいは規制強化には反対との意見もあります。(武石徹委員/一般財団法人 食品産業センター企画調査部 部長)PDF

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あくまでもざっと読んだ感じの自分の印象ですが、まとめるとこんな見解になるのかな。

①添加物に関わるメーカー側は、添加物を悪者扱いして印象を下げるので法規制してほしい。
②食品を購入する消費者側は、自助努力で本当の無添加を達成している事業者や昔ながらの伝統製法で自然なものをつくっている地域の中小零細事業者もいるので(保護する観点からも)、無条件に全面禁止することには反対。
(明記はされていなかったものの、たぶん「いい商品」をわかりやすく知って購入の目安にしたい、いい商品を買いたい。)
③事業者を束ねる業界団体や販売側は、Q&Aやガイドラインをしっかり作るべき。
(味噌は「無添加」の基準がある。醤油にも表示ルールがある。「無添加」の使用を認めていない業界もあれば、まったく規定がない業界もある。業界ごとに大きなばらつきがあるし、実際に「無添加」を作っている事業者の存在を考えると一律禁止は困難)

いやぁもう、議論百出ですね。
傍聴者のレポートを拝見すると、結局時間切れになり「ガイドラインをつくる」方向で無理やり?まとまったようです。
ある回のやりとりを記録した議事録と最終的な報告書へのリンクを以下に掲載しておきます。

📝 【議事録】第5回食品添加物表示制度に関する検討会議事録(消費者庁)PDF
📝 食品添加物表示制度に関する検討会報告書(消費者庁)PDF

要するに原材料表示をよく見よう

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自分が知りたかったので、わかったことをまとめているうちにこんなに長くなってしまいました。

ものすごくたくさんの資料やブログやホームページを見て思ったのは、やっぱり「原材料表示をよくみよう」ということです。

専門知識がなくても「なにこれ?」と思ったら、ちょこっとネットで調べてみて、気になったら買わないとか、無理なら大量に使わないとか、知っているのと知っていないのでは、もしかして未来が変わるかもしれないんですよね。

私はできるものだけやろうと思っていて、そもそもの加工食品の量を全体的に減らし、漬物は手作りして、味噌汁は煮干で出しを取っています。この大量の添加物の中で、それが何になるのか?と言われればそれまでですが、ほら、1円足りなくて買い物ができないときもあるじゃないですか。ほんのわずかでも、体が喜ぶ食事を自分と家族に提供したいな、と思っています。



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