モンサントの不自然なたべもの

私が食べ物に少しだけ興味を持つようになったのは、今から数年前、仕事のついでに立ち寄った山形の知人から手渡された一枚のチラシでした。

社会的弱者を支援するNPOを主宰している彼女は、色々な活動に関わっているらしく、それはある映画の自主上映会のチラシでした。

映画の題名は「モンサントの不思議なたべもの」。私はそのタイトルだけをチラ見して、当初は子供向けのコメディ映画なのだと思いました。

仙台から山形までわざわざ 行くほどの興味はまったくありませんでしたが、「行けたら行く」と返事をしてしまった私は、後日、もらったチラシを処分するときに後ろめたさを感じ、せめてどんな映画なのか?だけは確認しておこうと思いました。

初めてチラシをよく読むと、それはどうやら食べものへの問題を定義するドキュメンタリー映画のようでした。

そのときの私は細部にまで過敏にこだわるような健康志向の人達のことが嫌いだったので、なんとなく受け入れがたいイメージを持ちつつも、一応詳細を知ろうと思ってタイトル名で検索してみると、モンサントというのは会社の名前だったんですね。そしてさらに調べてみると、それに関する情報が一杯出てきて、いやー、これが、面白い、面白い。

真剣な人にとっては「面白い」という表現は失礼かもしれませんが、正直言って「はー、こんなこともあるのね」と「さもありなん」が交差する気持ちでした。

モンサント(現在はバイエル社に吸収)は世界の農業を牛耳るアメリカの巨大な多国籍企業ですが、遺伝子組み換え農産物では90%の世界シェアを誇ります。

前身は化学薬品メーカーですが、ベトナム戦争で使われた枯葉剤の製造メーカーであり、また、除草剤ラウンドアップを開発してラウンドアップに耐性をもつ様々な遺伝子組み換え作物(ラウンドアップ・レディー)を育種し、セットで販売するなど、かなりズルくて頭いいんですよ、この会社。

私が一番興味深かったのは、種ができない作物を遺伝子組み換えで開発しているという事実です。

作物から種が採れなければ、農家はその都度種を買わなくてはいけないので、利益が継続し続けます。

どこで読んだかうろ覚えですが、小麦や大豆やトウモロコシの種などは、いまやほとんどがモンサントはじめ、欧米の多国籍企業の独占状態で、人間が昔から食べ続てきたそれらの穀物とは違うものになっているらしいです。

そんな記事をネットのあちこちで読んで「へー」と興味が出てきたわけです。

だとしたら、小麦アレルギーというのもうなずけるし、グルテンフリーと言って「小麦(パン、うどん、パスタ等)をやめたら体調がよくなった」という健康法も、「あり」な気がしてきます。

人がそもそも古代から食べて来たものに対して、アレルギー反応が出たり、不調の原因になるなんて、おかしいですよね。

ちなみに成った実から種を採っても親とは同じ品質の作物にならない(つまり種が採れないと同意)農産物をF1というそうです。

いまはほとんどの作物の種がF1で、日本の種苗会社がつくっている農産物の種もほとんどがF1ですが、それは交配によってつくられたもので、モンサントなどの遺伝子組み換えでつくられたものとは基本的に別だそうです。

とはいえ、今はもう、すべての作物が「昔とは違うのだ」ということを思い知らされます。